Ferrari 612 Scaglietti

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    Impression

    かつてイタリア人映画監督ロベルト・ロッセリーニは
    女優イングリッド・バーグマンと恋に落ち、
    互いに家族を持ちながら不倫関係となった。
    その蜜月に、ロッセリーニはバーグマンのために、
    フェラーリに特別仕立てのマシンを注文した。
    375MMスカリエッティ・クーペ・ロベルト・ロッセリーニである。

    フェラーリ612スカリエッティのエクステリアには、
    ヘッドライト、そしてサイドを削ったボディデザインと、
    375MMのエレガントなシルエットが受け継がれている。
    この大人の色気が薫るデザインは、
    ピニンファリーナのチーフデザイナー、
    フランク・ステファンソンと
    スタイリングディレクター奥山清行の手によるもの。
    ふたりの巨匠スカリエッティ氏への畏敬が感じられる。

    このマシンは、クリージョ(イタリア語で灰色)シルバーストーンと
    呼ばれる深いシルバーのエクステリアカラーに、
    ロッソ(赤)のインテリアをオートクチュールし、
    ジアロレブカウンター、
    BOSEサウンドシステム、
    社外ナビゲーションシステムを備えている。

    シートはデイトナシートを装備し、
    美しいスタイリングに中に、2+2と4座を確保している。
    フェラーリにおいて、2+2というFRのGTカーという系譜は、
    この612スカリエッティシリーズで途絶え、
    受け継ぐモデルはアナウンスされていない。
    つまりこのマシンは、宿命のように、
    希少性のあるヴィンテージカーの道を歩むこととなった。

    エンジンルームには、
    2000年代のフェラーリのフラッグシップモデル575Mマラネロと同じ
    TipoF133E型5.7リッターV12エンジンが鎮座している。
    そのため最高出力は570hp/7,250rpm、
    最大トルクは60.0kgm/5,250rpmで、
    メーカーによれば最高速315km/h以上を達成できると
    アナウンスされている。

    ロッセリーニがスカリエッティにオートクチュールし、
    マシンが完成するまでに2年の歳月が流れた。
    特別な一台が納車されたときには、
    ロッセリーニとバーグマンの恋は終わっていたという。
    フェラーリはこのシリーズを最後に、
    FRにV12を載せた2+2というGTスポーツを作らないのだろうか。
    もし、そうであるとすれば、
    このマシンは稀少なフェラーリとして、
    永遠の輝きを見せ続けることになるだろう。